賭博としての麻雀を題材としており、文中に牌活字がしばしば登場する娯楽小説である。戦後復興期のドヤ街を舞台として、主人公「坊や哲」をはじめ、「ドサ健」、「上州虎」といった個性的な登場人物達が生き生きと描かれ、彼らが生き残りをかけて激闘を繰り広げるピカレスクロマン(悪漢小説)として評価が高い。
『鬼龍院花子の生涯』のモデルといわれる土佐の侠客・鬼頭良之助。その鬼頭を渡世上の叔父と敬慕しつづけた山口組二代目・山口登。“人は一代名は末代”といわれる通り、その名は広く知られながらも、語られることの少なかった二人の侠客の姿が関係者の証言などにより明らかになる。激動の人生を駆けぬけた男たちの群像をいきいきと描き出す。
正延哲士
1931年高知県生まれ。立命館大学中退。放送局勤務を経て、著述活動に入る。実在したやくざの人間像や、冤罪事件をテーマにした作品などで知られる