モーツァルト
①ピアノ・ソナタ第8番イ短調K310
②ピアノ・ソナタ第13番変ロ長調K.333
③ピアノ・ソナタ第15番ハ長調K545

マリア・ジョアオ・ピリス(ピアノ)
録音：1989年2月

ピリス2度目のモーツァルト:ピアノ・ソナタ全集からの名曲3曲の組み合わせです。ピリス46歳のスケールの大きいロマンティックな演奏です。2017年発行の名曲名盤500では、②③が第1位、①が第2位に選定されています。

ピリス第1回目のモーツァルト録音は、端正なスタイルの演奏でした。この新盤も基本は変わっていませんが、彼女の年輪の重さが十分に反映された深さと広がりを見せ感服させられる出来です。まさに入魂の演奏であり、完璧に磨き上げらています。これらはステージでの演奏も数多く、年月をかけて慈しみ、文字通り磨き抜いてきた自然な結果だと思います。ピリスの演奏は情熱的というよりは感覚的で、洗練された細部のタッチのなかに、きらきらと明滅する美しいパッションの断片がひっそりと息づいています。これはピリスならではの天性の神業であり、モーツァルトのエスプリを現代によみがえらせつつ、しかも聴衆の鼓膜をあたかも羽毛でそっとなでていくかのようにやさしく通り過ぎる、暖かな春の陽射しのようなモーツァルトです。

このピリスの演奏は、彼女独特のしなやかな演奏技術に培われていてみごと。モーツァルトらしい緊密で明澄な美しい音楽を生み出している。ゆったりとした旋律の起伏が、音の緩やかなうねりとして見事に再現されている。1990年前後のグラモフォンの録音環境の良さも、この演奏を引き立てている。

ピリスの演奏は情熱的というよりは感覚的で、洗練された細部のタッチのなかに、きらきらと明滅する美しいパッションの断片がひっそりと息づいている。これはピリスならではの天性の神業であり、モーツァルトのエスプリを現代によみがえらせつつ、しかも聴衆の鼓膜をあたかも羽毛でそっとなでていくかのようにやさしく通り過ぎる。暖かな春の陽射しのようなモーツァルトなのである。（奈良与志雄）

国内盤【廃盤】帯無し、盤面傷無し
プラケース少しすれあり

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