ベートーヴェン
①交響曲第2番ニ長調op.36
②交響曲第4番変ロ長調op.60

指揮：セルジウ・チェリビダッケ
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
録音：1996年①、1987年②、ともにライヴ録音

この2曲は「英雄」「運命」などの人気曲に隠れて地味な印象がありましが、じっくり聴けば大変美しい曲なので個人的には他の曲よりむしろよく聴きます。この晩年のチェリビダッケの演奏は録音もよく、大変素晴らしい内容です。スコアのなかに閉じ込められた味わいを一音一音見せてくれるような誠実なもの。聴衆とエネル ギーをやりとりをするライブですから、驚くほどスリリングな場面もあります。

第4番は静かな序奏から始まります。暗い中で何かが胎動するような、予感に満ちたその音にまず引き込まれます。とりわけシンプルな低声部の進行は 魅力的で、コントラバスの低いうなりが十分に聞き取れるチェリビダッケの録音にはこの部分での感覚的な満足があります。ピツィカー トの最初の一音から印象的で、管の響きがはっきり分離して聞こえるところが他の演奏と違います。そして厳かな序奏から躍動する輝 きへとコントラス ト豊かに進行する流れは、曲も演奏も喜びに満ちています。

第2番の優美な第2楽章にはいつもうっとりさせられます。ゆっくりと深呼吸をするように弦が上昇旋律で問いかける冒頭から夢見るような気分に誘われますが、すぐに下降旋律が応答し、それが繰り返されて長調から短調へ、短調から長調へと入れ代わります。雲の間から太陽の光が覗くように、少し明るくなったかなと思うとはっきりと輝き、また曇ってきます。希望を持っては手放すことの繰り返しを通して自分と向かい合ってきた人の美しい歌のようです。ベー トーヴェンの葛藤が心に染みるとき、この比較的初期の作品においても、古典派の均整を超えた主観の動きがはっきりと 感じられます。晩年の チェリビダッケのゆったりとした演奏は、聴いている間に色々と感じさせる余裕があり、隠された本質を明るみに出してくれるような気がします。

輸入盤　4
盤面わずかなすれありますが再生問題無し

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