サンバーストのため落ち着いて見えますが、ボディのキルト、ネック裏やヘッドにびっしり入ったバーズアイが素晴らしく、魅力的です。特にネック横のバーズアイは弾く時に嫌でも目に入り、気分が高揚します。ステージでは適度に目立つキルトが最高の塩梅で照明に照らされ、目立ちすぎないけど豪華という不思議な印象を与えます。
ルックスだけでなく、音や弾き心地も抜群なベースです。
90年代初頭にオーダー製作された古い個体ですが、そのためか、ボディはキルトメイプルのみ(トップに貼られているのではない)、指板のエボニーは黒々としたかなり上質なものと思います。

日本を代表するメーカーmoonですが、トラディショナルなタイプでのPJは珍しいと思います。

ピックアップはEMG(アクティブ)です。アクティブについては音圧が強いというよりはノイズレスのメリットが大きいと思います。また、極めてクリアで鈴鳴り感(?)といつまでも鳴り止まないサスティンも魅力です。クリアさ故にコード弾きもかなり綺麗に濁らず響きます。
音の拾い方は繊細で、各弦のニュアンスの違いをしっかり表現してくれます。それでいて4弦もドンとしすぎず、エフェクターを通してもベースの元の音とエフェクターの効果がケンカをしない印象です。

アンプ直の場合はトーンの絞り具合で音のクリアさをどのくらい減らすかでの音作りが良いと思います。トーンを絞っていくとちょうど良い生感を得られるポイントがあり、プレベ・PJらしいロックな音が気持ち良く抜けてきます。

アンプ直派にも足元派にも、ジャンルを選ばずに使えるベースだと思います。

自分はフロントのみ、トーン4割前後で使うことが多かったです。全パートを下から包み込む音空間を作れます。場を支配するというよりも全てのパートのために存在してあげているという優しさを感じ、非常に温かい気持ちで演奏できます。やや大きな船のようなイメージで使っていました。全パートを乗せて、どんな荒波からも守ってあげるけれど波の影響は受ける(淡々と音を出すのではなく、場の状況を適度に受けて、音楽らしく弾く)という感じです。頭で考えていないのに、その場その場でピッキングの仕方や音のニュアンス、使う弦やフレットなどが自然とアレンジされ、異常な楽しさで演奏できました。他のベースでは1度も感じられなかった感覚です。